
『リトル・マーメイド』は、アンデルセン童話の『人魚姫』を原作としたディズニー映画です。
しかし、この2つの作品はストーリーが大きく異なることをご存じでしょうか?
『リトル・マーメイド』を見たことがある方は、
「原作とアニメは何が違うの?」「原作の結末はよく知らない」
と思っているかもしれません。
実は『人魚姫』の物語には、ディズニー映画にない「残酷な描写」や「悲しい結末」があるのです。
この記事では『人魚姫』と『リトル・マーメイド』の違いについて、キャラクターの設定や作中で描かれないシーンを基に比較していきます。
2作品の意外な違いや知られざる設定も紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。

『人魚姫』は1837年に、デンマークの作家“ハンス・クリスチャン・アンデルセン”によって書かれた童話です。
1991年に日本で公開されたディズニー映画『リトル・マーメイド』は、『人魚姫』を原作としていますが、主人公のキャラクター性や物語の方向性は大きく変えられています。
まずは、2作品のあらすじを整理してみましょう。
海の底に住む人魚姫は、地上での暮らしに憧れを抱いていました。
ある日、嵐で海に落ちた王子を助けたことをきっかけに、彼に恋をします。
人魚姫は海の魔女と取引し、「声」と引き換えに人間の足を手に入れますが、その足は歩くたびに激しい痛みを伴うものでした。
王子のそばで暮らすものの想いは届かず、王子は別の女性と結婚してしまいます。
人魚姫は人魚に戻るために「王子を殺す」選択を迫られますが、それを拒み自ら海に身を投げました。
引用:ディズニー・スタジオ ムービーストア 公式YouTubeより
海底の王国・アトランティカに暮らす人魚・アリエルは、人間の世界に強い憧れを抱いています。
ある日、嵐で海に投げ出されたエリック王子を助けたことをきっかけに、アリエルは彼に恋をします。
もう1度彼に会いたいと願うアリエルは、海の魔女アースラと契約し、「声」と引き換えに人間の姿を手に入れました。
アリエルはエリック王子と再会しますが、アースラがアリエルの声を使って変身した女性・ヴァネッサに妨害されてしまいます。
終盤ではヴァネッサの正体を知ったエリック王子がアースラに立ち向かい、戦いの末に彼女を倒しました。
その姿を見たアリエルの父・トリトン王は2人の想いを認め、魔法の力でアリエルを人間の姿に変えます。
人間になったアリエルはエリック王子と結婚式を挙げ、幸せに暮らしました。
2作品の内容を簡単にまとめると、以下の通りです。
人魚姫:静かで切なさを感じさせる物語
リトル・マーメイド:冒険と恋愛を中心に描いた明るい物語
同じ物語をもとにしながらも、作品の方向性が大きく違うことが分かります。

画像引用:ディズニー・スタジオ(アニメーション)公式Xより
『人魚姫』と『リトル・マーメイド』を比べた時、最も印象が分かれるのが「結末」です。
どちらも「王子に恋をして、魔女の力で人間になる」という同じ設定から始まりますが、迎える結末は大きく異なります。
原作の人魚姫は、最後まで王子の愛を手に入れることができませんでした。
人魚に戻るためには「王子を殺し、彼の返り血を浴びる」必要がありましたが、彼女はそれを選ばず、自ら海に身を投げます。
人魚姫は、見返りを求めない愛と自己犠牲を貫いたことで神に認められ、「空気の精霊」として生まれ変わります。
王子と結ばれることはありませんでしたが、精霊として「永遠の魂」を得るという、別の形での救いが与えられたのです。
『リトル・マーメイド』の主人公アリエルは、エリック王子と無事に結ばれました。
アースラを倒し、父トリトンにも想いを認められたアリエルは、人間として生きることを許されました。
物語のラストでは、アリエルとエリック王子の結婚式が描かれます。
「真実の愛を信じ、行動すれば夢は叶う」という、誰もが安心して見られるハッピーエンドです。
『人魚姫』と『リトル・マーメイド』は、どちらも“愛”をテーマにしていますが、その捉え方には明確な違いがあります。
原作が問いかけているのは、「報われなくても、相手を傷つけない選択をする」というテーマです。
一方、ディズニー映画は「自分の想いに正直に行動することで、未来は切り開ける」という前向きなメッセージを伝えています。
この2つの結末は「悲劇のヒロイン」と「幸せを掴んだヒロイン」という、真逆の人物像を描いているのです。

画像引用:ディズニー・スタジオ(アニメーション)公式Xより
人魚姫とアリエルは、同じ物語を基にしながらも、性格や行動に大きな違いがあります。
2人を比べていくことで、作品全体の印象が変わる理由がはっきり見えてきます。
原作の人魚姫は、内向的で控えめな性格として描かれています。
声を失い、強い痛みに耐えながらも、自分の苦しみを誰かに訴えることはありません。
王子のそばにいながら想いが届かなくても、彼の幸せを優先し、最後まで自分の気持ちを押し殺します。
原作の人魚姫は、「耐えること」や「犠牲になること」で愛を示すヒロインだと言えるでしょう。
引用:ディズニー公式YouTubeより
『リトル・マーメイド』の主人公アリエルは、明るくポジティブな性格のキャラクターです。
人間の世界への憧れも、エリック王子への恋心も、隠さずまっすぐに行動で示します。
声を失っても、表情や仕草で気持ちを伝えようとし、仲間たちの助けを借りながら運命を切り開いていきます。
アリエルは「自分の選択で未来を変えようとする」ヒロインとして描かれています。
人魚姫は、愛する人の幸せのために自分を犠牲にすることを選びました。
アリエルは自分の想いを信じ、行動することで幸せをつかみ取ります。
この違いは「我慢と献身」を美徳とする価値観と、「自分らしく生きること」を大切にする価値観の違いと言えます。
同じ人魚姫という存在でも、時代や作品によって、求められるヒロイン像は大きく変化しているのです。

『人魚姫』と『リトル・マーメイド』には、どちらも「人間になるためには代償が必要」という条件があります。
原作は想像以上に残酷な描写があり、ディズニー映画ではそれが別の形で描き直されています。
2作品で描かれる「人間になる代償」を比較していきます。

画像引用:Amazon 公式サイトより
原作で描かれる「人間になる代償」は、かなり残酷なものです。
海の魔女が出した条件
・美しい声と引き換えに、尾ひれを人間の足に変える
・その足で歩く度に、ナイフで抉られるような痛みが走る
・王子に心から愛されなければ、海の泡になって消える
人魚姫の恋の成就よりも、「何かを強く望むことが、生き方そのものを変えてしまう」怖さを描いています。

画像引用:金曜ロードショー 公式Xより
ディズニー映画では、原作のような肉体的な苦痛は描かれません。
その代わりに強調されているのが「声を失うこと」です。
アースラが出した条件
・美しい声と引き換えに、3日間だけ人間にする
・3日以内にエリック王子とキスができなければ、アリエルの全てがアースラのものになる
アリエルは声を失ったことで、自分の想いや正体を伝えられないまま、エリック王子と過ごすことになります。
ディズニー映画で描かれる代償は「気持ちを伝えられない」という、観る人が共感しやすいものとして表現されています。

画像引用:Amazon 公式サイトより
ディズニーが原作の残酷な描写を避けたのは、『リトル・マーメイド』が子ども向けのアニメーション映画として制作されたためです。
物語の中心には、「好きな人と結ばれる」「夢を叶える」「家族との和解」といった、年齢を問わず共感しやすいテーマが据えられています。
その結果、子どもから大人まで楽しめるハッピーエンドへと再構成されています。

画像引用:ディズニー・スタジオ(アニメーション)公式Xより
『人魚姫』と『リトル・マーメイド』では、主人公の描かれ方だけでなく、周囲のキャラクターの設定や役割にも大きな違いがあります。
原作とディズニー映画における、主人公を取り巻くキャラクターの描かれ方の違いを比べてみましょう。

画像引用:ディズニー・スタジオ(アニメーション)公式Xより
『人魚姫』に登場する王子は、人魚姫が一方的に想いを寄せる存在として描かれています。
冒頭で海に落ちた王子は人魚姫に助けられますが、彼女が「命の恩人」であることには最後まで気づきませんでした。
原作の王子は、彼女の「報われない愛」を象徴する人物として描かれているのです。
『リトル・マーメイド』に登場するエリック王子は、嵐で海に落ちた自分を助けてくれた女性(アリエル)に恋をします。
しかし、アリエルとの再会時には彼女が声を失っていたため、別人だと思い込んでしまいます。
最終的にはアリエルが「命の恩人」だと気づき、アースラとの戦いにも自ら立ち向かいました。
王子の描かれ方の違いは「主人公の恋が実るのか」という、物語の方向性の違いを表しています。

画像引用:ディズニー・スタジオ(アニメーション)公式Xより
原作に登場する『海の魔女』は、人魚姫の願いを叶える代わりに「足と引き換えに声を失う」「王子に愛してもらえなければ、泡になって消える」という条件を出します。
海の魔女は主人公を積極的に陥れるのではなく、人魚姫の覚悟を際立たせる存在と言えます。
ディズニー映画の『アースラ』は“トリトン王の地位を奪う”という目的のために、アリエルの恋心につけ込む悪役として描かれています。
中盤ではアリエルの声を利用して人間の女性『ヴァネッサ』に変身し、エリック王子との仲を引き裂こうとします。
海の魔女が人魚姫に選択を突きつけるのに対し、アースラはアリエルの恋を妨害するキャラクターとして、物語に緊張感を生み出しています。

画像引用:金曜ロードショー 公式Xより
『人魚姫』に登場する人魚姫の姉たちや祖母は、「人魚と人間の違い」や「地上で生きることの厳しさ」を伝える存在です。
身近な人達の言葉を通じて、人魚姫が人間の世界に憧れを抱いていく様子が描かれています。
祖母の言葉
・300年生きられる人魚と違い、人間は短命であること
・死ねば泡になって消える人魚とは違い、人間は魂が天国へ召されて永遠に生き続ける
・人間は異形の存在である人魚を愛することはない
姉たちの行動
・海の魔女と取引をし、自分達の髪と引き換えにナイフを手に入れる
・人魚姫に「王子の返り血を浴びれば元に戻れる」ことを伝える
原作における姉たちと祖母は、主人公に導きや助言を与え、その意思を尊重するキャラクターです。

画像引用:金曜ロードショー 公式Xより
“トリトン王”は『リトル・マーメイド』に登場する、アリエルの父親です。
彼は人間を「野蛮な存在」と呼び、娘を守るために「海の上に行くな」と厳しい態度を取り続けます。
しかし、物語が進むにつれ、トリトン王はアリエルの強い想いと覚悟を目の当たりにします。
最終的には「お前の好きなように生きるがいい」と伝え、アリエルとエリック王子が結ばれることを受け入れました。
トリトン王が「娘の人生を尊重する」存在へと成長し、家族と和解することがハッピーエンドへとつながっているのです。

画像引用:ディズニー・スタジオ(アニメーション)公式Xより
『人魚姫』と『リトル・マーメイド』では、主人公の愛の形や結末が大きく異なります。
2作品を比較することで、それぞれが描く「本当の幸せ」の違いが見えてきます。

『人魚姫』の主人公は、王子に恋をした人魚姫です。
彼女は「歩く度に激痛が走る」「愛されなければ泡になる」という命の危険を冒してまで、王子との交流を深めていきました。
この物語で描かれるのは、「見返りを求めず、相手の幸せを願う愛」です。
人魚姫の愛が報われないとしても、自己犠牲や王子への愛が「空気の精霊」として生まれ変わる救いに繋がりました。

画像引用:ディズニー・スタジオ(アニメーション)公式Xより
『リトル・マーメイド』の主人公アリエルは、エリック王子との愛を自分の力でつかみ取ります。
「声を失う」「アースラに邪魔をされる」など数々の困難を乗り越え、父トリトン王にも想いを認められたアリエルは人間となり、エリック王子と結婚しました。
ここで描かれるのは、「自分の想いを原動力にして、愛を手に入れる力」です。
努力と勇気によって幸せを掴むという、アリエルの前向きな意思が表れています。
原作:報われなくても尽くす愛 → 自分の心の成長や内面的な救い
ディズニー映画:自分で選ぶ愛 → 自ら行動して手に入れる幸せ
人魚姫とアリエルの「愛のかたち」を通して、それぞれ違った幸せのあり方を描いています。
愛の形や幸せの価値はひとつではなく「人によって違う」ことが、作品を通して伝えられています。
今回は『人魚姫』と『リトル・マーメイド』について、物語のテーマや登場人物の役割の違いを中心に見てきました。
『人魚姫』では報われなくても相手を思い続ける愛や、自分の選択と向き合う姿が描かれています。
一方、ディズニー映画『リトル・マーメイド』では、自分の想いを原動力にして、幸せをつかむ物語へと描き直されました。
どちらも愛や幸せの形は違いますが、「自分がどう生きたいか」「何を大切にするか」を考えさせてくれる作品です。
だからこそ、『人魚姫』は時代を超えて、今も多くの人に語り継がれているのです。